高次は、本当に来た。



本当はきちんと説明しなきゃいけないような



用件じゃないし、



別に今言う必要のあるものでもないから



どうでも良いことを、



わざわざ告白するみたいに呼び出して。




「何か、用でもあるの?」


「ないけど・・」



「嘘だね」



簡単に人の嘘を見破る高次が嫌い。


「本当にないから」


「嘘だって書いてるよ?顔に」


簡単に嘘をつく高次が嫌い。


「書いてないよ」 


「じゃぁ、なんで呼び出したの?」



何でって・・・



高次が、


裏切ったことについて説明するため。


そんなこと言えない。


今更だけど、


言いたくない。


高次に裏切り者を証明して


何になるんだろう。


友達が好きなら、


それはそれで何の後悔もないはずなのに


私はまた、過去に好きだった男に未練があった。


高次は、気がつけばいつも一緒にいて



こうして、今も一緒にいて。


何もかも、私と行動が一緒で


クラスも、委員会も一緒で。


高次の存在は、自分の中で


もの凄く大きな存在になって。


そして、気がつけば今の今まで嫌いだった高次のことを




また好きになってしまっている。





「もう、帰っていいよ」


「帰らない」



「強情だね」



「いつもそうじゃん?」



周りには、この一連の会話を告白と勘違いしている人が


沢山いた。


男女問わず、おそらく自分のクラスの人がほとんどだろう。


これがもし、本当に告白だったらどうなってるんだ。


今高次が誰のことを好きであろうと、関係なく私が告白したら


なんて返事が返ってくるんだろう。


無理、ありえない、消えろ。


このまま想いを伝えずに


いるのもなんだかもったいないような気がする。



だけど、私さえなにも言わなければ



ずっと高次と一緒にいることができる。



「なんか、周り騒がしいし・・用件はまた今度」


「あぁ、、じゃぁ仕方ないね。じゃぁまたね」



なんだ。



こんな風にちゃんと言えば、帰ってくれるんだ。







でも、今私なんていった??





『用件はまた今度』









嘘だって。




用件って・・。



それは、もう告白同然。








もう高次が裏切ったことなんてどうでも良い



誰が好きであろうとどうでも良い。



私は、


私が高次のことを好きであれば、



それで良い。



いつしかそう思えるようになった。
















その夜、ちゃんと真剣に高次のことを考えてみた。



ベッドの上で仰向けになって、


手を頭の後ろで組んで、ベタなポーズをとった。



考え事をするこの時間は、勉強のことも部活のことも委員会のことも何も


考えないようにした。



おそらく明日また、高次は階段下のところに来るだろう。



そして、沢山の観客が


集まって私と高次を囲んで


振られたところを、つっついたりして遊ばれる。



変な想像ばっかりをしてしまう。



あくまでも前向きに・・


頑張るしかない。





そう決意したのは、24時30分頃。




高次は、今日の放課後


必ず階段下に来る。


もしこなかったら、



そのときは、呼び出す。





そして眠りについたのは、25時頃 










「おはよう!」



私の心の中は、大荒れだけど


あたりまえだけど、この学校は相変わらずの様子だ。



夜散々考えて、


出した結果が今日の告白だ。



今日言って、後悔はない。 



階段の下で、


私は、高次に一言言えば終わるんだ。




その後の授業は気が気でなかった。



ノートだけは無意識のうちに取っている。




自分でもわからない。



人生のうちで、二度目の告白に



ここまで緊張する理由が。


本気で好きじゃないのかもしれないし、


この気持ちが実は偽りなのかもしれないし、


実際本当は高次のことをなんとも思っていないのかもしれないけど。



でも、今思うのは、




高次と一緒にいたいということだったから。


今の自分の気持ちに、偽りなんてないと思った。





放課後、掃除の時間。



「はぁー」



机を動かしながら、自然と出るため息。


それを見ていた高次が一言私に言った。



「どうした」


今優しくされると、 


未練が物凄く残っちゃうから・・



できることなら話しかけないで欲しかった。


もう、自分自身に限界が来ている。



本当に、好きで好きで仕方なくなってきた。



「今日の放課後、階段下に来て」



二度目の呼び出し。


まだおぼつかない震えた声が、高次の耳に届く。


「わかってるよ」



やっぱり今日も階段下にくる予定だったんだ。


でもそれで安心した。


また階段下に来る予定だったということは、


告白される自覚があるっていうことなんだ、って思った。


そう考えると、徐々に昨日の夜とは違う緊張感が湧き出てくる。



ソワソワする。


早く言わなきゃいけない。って思う。


できれば今掃除を抜け出して、告白したいって思う


いつもは面倒な、机の並び整理も


それほど苦ではなく、早く終わらせたいという気持ちからか


凄く早く終わらせることができた。






そして、階段下に向かう。



掃除中の高次との会話は、声が震えてまともに喋ることができなかった。


これからすることは、


いつものような会話じゃなくて、


告白だから・・・・


緊張しすぎて


何もいえないかもしれない。


不安だけど仕方ない。


もう呼び出したんだ、


もうすぐ高次が来る。









「すいません」 



誰かが言った。


辺りを見ると、誰もいなくて



少し遠くに目線を送ると、


高次がいた。




そしてその横に、高次より背が30cmくらい低い


女の子がいた。



少し話が聞こえてきた。



「ごめん、呼び止めて」


「用あるなら早めに・・」





「好き」 



女の子は突然告白をした。



この子は高次のことが好きなんだ。



高次の驚いた表情は、


とても印象に残る顔だった。



そして、高次は笑った。




あぁ、 




告白OKするんだ・・・・・・・・・




そう思ったとき、私はその場から立ち去った。



私が今日呼び出した意味


昨日の夜悩んだ意味が


全くなくなってしまった。



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