寂しさと不安が一気に押し寄せる。



外はようやく真っ暗になった。



手元の腕時計を見ると


誘拐・・されてから、8時間


たったことになる。


私はずっと崖のところで



眺めの良い景色を


延々と見ていた。





「もういいよー」



待たされているわけでもないのに


かくれんぼみたいな事を言われた。。



「何が・・もういいの」


「ほらまた、、敬語がどっかにいってるよ」



「そんなのどうでもいいでしょ?」



「あー怖い怖い」



どうせ、そのうち殺されるし


言いたいこと沢山言ってから



死んだほうが良いかも。




開き直ってしまう、自分がここにいる




戦争中って

こんなことを考えるようになるのかな・・。


「今日外で寝るわけにいかないでしょ?」


「え?」


思いがけない男の一言から、


自然と優しさが伝わってきたような気がした。


「テントあるから、そこで寝なよ」


「どうも」


私は素直に答えた。


後ろを振り返ると、


テントがあった。


だけど、私はすぐにテントに向かおうとはしなかった。


「さっきいた男、私が少し前に振られた男なんだ」


「陽太ってやつか」


「うん」


「あいつも、利香と同じところからつれてきたんだよ」


なぜか、男は私の名前を知っていた。


何故か・・知っていた。


「何で私の名前知ってるの?」

「陽太が言ってたよ」


「陽太が・・」


唖然


陽太が名前を教えた。。


どことなく、嬉しい感じになる。






振られた男でも、、



そんなにすぐあきらめられるわけじゃないから・・

まだ私は




陽太が好きだ。


陽太の口から自分の名前が出るだけで


凄く嬉しい。。。




「利香って今好きな人いる?」


男は、私の隣に座ってきた。


あぐらをかいて、


手を後ろについている。


「いるよ」


また、素直に事実を言った。

「俺さ、この間女に告って振られたんだ」


「へぇ・・」


「なんて振られたと思う?」


「ごめんねとか?」


「ううん、違う」




隣にいる男が、泣き出した。



「言いたくないなら、言わなくて良いよ」




今まで、男が泣いたところを



見た事がなかった。



「カットのこと好きだけど、月末に転校するから、今付き合えないって」


私は、


男の辛い過去を知ってしまった。



思い切って告白した



そして、二人は両思いだった


だけど、彼女の転校により


二人の交際は、


夢で終わった。



「カットって、あだ名?」


「うん、そうだよ」


今は明るくしてるけど、


本当は心のどこかで


物凄い傷ついているのかもしれない。




私が陽太に告白をしたときは


『俺は、お前のこと何も知らない。知らないやつとは付き合えない』


私が早まりすぎただけだった。


いや、だけじゃないのかもしれないけど。


それ以上に、


カットは物凄く、、傷ついている。


「カット、、その気持ちわからなくもないけど
 ちょっとは前進しなきゃだめだと思う」


「そうかな」


「うんそうだって!」


かける言葉に説得力があるかはわからないけど


私はとりあえず、


カットにいえるだけのことを、言っておきたかった。


「あのさ、、俺もう彼女とかできないと思うんだよね」



「なんで?」


「アイツ一筋って決めてたし。ほら、今利香を誘拐してしまっているわけだし」



カットの心が傷ついてるっていうのに



その傷を少しでも癒してあげられるような言葉を


必死で探した。



だけど、見つからなかい


「カットの思うように、生きていけば良いさ」


カットはまた泣いた。



「ちょっとごめん」







カットの両手が


私の両肩の上にある。



目が合った。


「どうした?」


「俺、すっごい不安・・誰も守ってくれなくて
 守れなくて・・・」


カットはそのまま両手を引き寄せ、私の身体を近くに寄せた


「何してんの・・・?」


「見りゃわかるだろ」


いつも以上に優しく、、


話してくれるカットが



ちょっと以外だった。


私が抵抗したら、


余計きつく抱きしめてくる。



「もう、良いでしょ」


「あ、、ごめんつい・・」


カットの不安な気持ちは、


抱き合うことにより、


深く、私の心にとどまった。



「もう、寒いからテント入るよ」


私は、足早にこの場を去った。


後ろにあるテントに、靴を脱いで入る。



「あ、、、、」




「何でいんの?」


「それ聞きたいのこっちなんだけど」


テントの中には、陽太の姿があった。 


体育すわりで、オレンジ色で無地の毛布を肩から巻いていた


「男の人が、ここで寝なって」


「俺もここで寝るんだけど・・」


テントの中を見ると、広さにして3畳くらいの


まぁまぁの広さがあった。


寝袋もちゃんとあるし


「別に、大丈夫じゃない?寝袋あるし」



「って、心配してるのそこ?」


「うん」


「俺信用されてないなぁ・・」


「だって、めっちゃプレイボーイでしょ」


陽太は昔からプレイボーイだという噂があった。


それはクラス中でも有名な話で、


昨日は、あいからその話を聞いたばかりだ


短髪の超運動部で、


勉強ができる。


だけど、物凄いプレイボーイ





突然、ひざが震えだした。


そのプレイボーイと私は今




二人きり




「震えてる・・大丈夫?寒い?」


「違う、、陽太が怖い」



「俺何もしないよ?」


信用できなかった。



でも、私は陽太と一緒にいるこの時間自体は


嫌いじゃない。


でも


陽太の普段しているようなことは



誰がなんと言おうと、気に食わない。



「本当に?」







「っていうか、好きでもない女とはやったりしないよ」







好きでもない女





この言葉が頭から・・・・





抜けない。。





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