いつも隣にいて欲しかった存在だった。























美枝がいなくなってから、



俺は年に3回の花火を3年間ずっと見に行っている。



お祭りの開催にちなんで行われる花火、


近くの幼稚園で毎年行われる花火


最後は、思い出の花火大会。


3年前のこの大会のあと、


美枝はいなくなった。


俺の前から。









美枝は、殺されたらしい。










殺されたと知ったのは、


その日。



昔の友達と会って、


立ち話をしてから帰ろうとしたとき


帰り道に人だかりがあって



そこに倒れていたのが


美枝だった。



気絶してるのかと思った。


まだ死んでいないと思った。


だけど、




見れば見るほど、


美枝の体からあふれ出るように


大量の血が流れてきて


正直目を疑った。


赤いペンキだろうとも思いたかった。


だけど、



血の臭いは



本物だった。



無数の切り傷と



真っ赤に染まった携帯電話



そのときの雰囲気がそのまま伝わってきた。


救急車に電話はしなかった。


そのまま美枝を抱いて


美枝の家につれていった。



目を閉じ、



何もはなすことのない美枝を



俺は、美枝がいなくなったあとすぐに



一通のメールを送信した。



そのメールは、


2人で行った最後の花火大会の日に、



美枝の前で打っていたメールだ。



FROM:京介

もう花火はちゃんと見れただろう。
今日の花火が、
俺達にとって最後の花火だとしても
美枝がどこに引っ越すとしても、
俺は、

美枝と結婚したい。





そんな、



答えようのない質問に



美枝は、



ちゃんとその日のうちに


返信してくれた。



FROM:美枝

ありがとう、京介。
だけど、結婚は出来ない。
本当に京介がすぐ付いてこれるような
ところじゃないから。
京介の知らないところに
行く。

これから、
今すぐに行かなきゃ。

もっと沢山思い出作りたかった。
でも今日で最後。

バイバイ。












このメールを見たのは、



俺がメールを送信した30分後だ。


多分、


その30分間

ずっとメールを打っていたのだろう。


メールなんかより、


直接会ってくれたほうが断然嬉しいのに。



メールなんて








本当は送ってくれなくても



良かったのに。












俺は今、




一年に三度ある花火大会のうちの


最後の花火大会に来ている。



山の上から打ち上げられる




とても大きな花火。



瞬きするのがもったいないくらいに


綺麗で、



色鮮やかで



勿論、この街のどこにいてもその花火は見ることが出来る。



だけど、それでも


俺達は2人で、


わざわざ山の目の前まで見に行って


どこよりも大きく見える花火を見た。







そして今日も



俺は山の目の前まで、花火を見に行った。




沢山の人がいるけど



空に浮かぶ花火は、


沢山の人を物ともしない。





大きな花火が一発、また一発と空に打ちあがるたびに



歓声が上がる。



見るたび鮮やかな色に染まる


広い空は、


星と月と、


花火しか映さない。



































美枝は、星じゃなくて花火になった。




















花火、続編end




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