美術部が


大好きだ。















































canパス













































私は絵を書くのが大好きだ。



マンガじゃなくて、


景色を書いたりする方が好き。





美術部に入ってまだ一年もたっていない。








この部活での目標は、


毎年2月に行われている、


県のコンクールで、金賞をとって


全国まで自分の書いた絵を連れて行ってもらうことらしい。


2月までは、かなり時間に余裕がある。


題材を考えたりすることに時間をかけたい、



だけど、いくら考えても



良い題材が見つからなくて、


悩ましかった。






「何してるの?」


「瞑想」


「てっきり私は寝てるのかと・・
 って何で瞑想?」


「コンクールに出す絵の題材が決まらないの」


私はこうして、


暇さえあれば、題材を考える毎日。








昼休み


私の足に軟らかい感触のボールがあたった。


「泰恵〜!それとって」


「はい」


私は、50m程先に見えた友達のところをめがけて


ボールを投げた。



すると、友達はそれをキャッチして礼をしながら手を振った。


丁度砂ぼこりのせいで、くっきり見えなかったけど。


後ろから、誰かが声をかけた。


「あんたもったいないよ?」

「何が」


「普通さ、あの距離をあのボールが簡単に飛ぶと思う?」


「思う」


「いや、私は思わない。そう思ってるのはあんただけだ」


「あ、、そうですか」


「なんなら、ソフトボール部はいらない?」


「お断り。今コンクールの題材探してるから」


かなりの確立で、


毎日ソフトボール部の勧誘が来る。


美術部にやっとなれて、


これからコンクールの準備ってときに


何故私が、ソフトボール部に入らなければいけないのかが



さっぱりわからない。




そしてまたボールが足にぶつかった。


今度は、小さめの固いボール


「パス!!」


野球部だった。


野球部が遊びでキャッチボールをしていたのが


こっちに外れて、飛んできたという経緯だった。


私はまた50mくらいの距離を投げる。



「ありがとう」



今度は勧誘の人が来なかった。




私は、毎度毎度こんなことをして


昼休みの時間をつぶしている。


そのせいで



3週間ちかく題材を考え続けている次第だ。





「さっき、凄かったね」



やっぱりきた。



毎度おなじみの勧誘。



「部活なんて変えないよ?」


「変えろなんて言ってないよ」

「あぁ、、そう」


「何組?」


「4組」

勧誘じゃない男子との会話は、


意外と初めてだった。




このときの会話はこれだけだった。



組をきいた後、すぐに教室に向かって走っていったのだった。


私は、それ以上に



彼のことを気にせず


その後の授業を受けた。


勿論、野球部にもソフトボール部にも


入部することは一切考えていない。





まだ、美術部で



冬のコンクールに向けて、


題材を考えているところだった。


やっぱりまだ決まらない。


放課後の部活でも、


これといった決定打は見つからず


また昼休みに題材探しのたびにでる毎日になろうとしていた。



でも、


せっかくの放課後を


題材探しで終わらせるだけじゃ、


やっぱり物足りなかった。



美術部でいる以上は、やっぱり絵を描きたい。



私は鉛筆を手にとって


遠くを見た。 


目の前には、曇った窓ガラス。



今は、これしか書きたいと思うものがなかった。



今描きたいものは見つかるけど



コンクールに出すための題材は


何も出てこない。



不思議と勝手に手の動く画用紙の上


微妙な色合いを作り出すパレット。


この二つのおかげで、


私は自分でも納得のいく絵を描くことができる。



自分の書きたいものを描き続けることが


今、私にとって一番楽しいことだった。


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